「叡智の断片」を借りられるように
「ミッテランには100人の愛人がいる。その中の一人がエイズなのだが、それがどの女か彼は知らない。ブッシュには100人のボディガードが付いている。その一人は実はテロリストだが、それが誰か彼にはわからない。そして私には100人の経済顧問が付いていて、その一人は優秀なはずだが、それが誰だかが私にはわからないんだ」
※ミッテラン…フランスの首相
ゴルバチョフの発言から本書は始まる。
著者は、偉人の言葉を引用することを「叡智の断片を借りる」と表現している。
また、日本では偉人の言葉を引用することが少ない。自分の意見を飾る際に、引用は必要になってくるが、日本では意見を言う機会がそもそもないからである、と主張をする。
本書では、そんな「叡智の断片」を交えて、様々なテーマについて著者が語っていく。ユーモラスな叡智の断片は自らの人生の見方を少し豊かにしてくれそうである。
「ぼくはきみの意見に反対だ。しかし、きみがそう言う権利のためには命を懸ける」ーヴォルテール
結婚の真実、という章が面白かった。
「本当の幸福がどんなものか、ぼくは結婚するまで知らなかった。知った時はもう手遅れだった。」ーマックス・カウフマン
「私たちの結婚生活が長く続いている理由をよく人に聞かれるんですよ。そうむずかしいことじゃない。週に二度はレストランで食事をするんです。ロマンチックな蝋燭の明かりで、心地よい音楽とダンスを楽しみ、おいしいものを食べる。妻が行くのは火曜日で、私は金曜日です。」ーヘニー・ヤングマン
「申し訳ない、御社をぐちゃぐちゃにしたのは私です。」
唐突な謝罪文から始まるこの本は、MIT卒の経営コンサルタントの方が実体験を元に書いた指南書である。
英訳は「I'm Sorry. I Broke Your Company」だそうだ。
僕は経営コンサルタントでもないし、就活の時には選考で落ちた経験もあるので、本を通じてコンサルタントの仕事の一面を垣間見ることができるのはいいことだと思う。
この本を読んで感じたことを以下のトピックに分けて書いていこうと思う。
◇要旨
◇コンサルタントの苦悩
◇大事なところ
◇面白かったところ
1.人の振り見て我振り直せ
2.「コンサルが去ったあとに残るのは『大量の資料』だけ」
3.問題を自覚しているけれど、変えられない時の救世主
4.「数値目標」が組織を振り回す
◇要旨
この本の要旨はIntroductionの23ページ、本を開いて3分ほどで到達するところに書いてある。
「ビジネスは『数字』では管理できない。なぜならば、ビジネスとは「人」であるが、人間は理屈通りに動かないからだ。逆に言えば、人材のマネジメントさえできれば、あとはうまくいったも同然だ」
抜粋してまとめるとこのような内容になる。
これを本旨に置きつつ、著者の実体験を交えて本書は展開される。
◇コンサルタントの苦悩
「貴社の関係間の連携を強化するお手伝いをします〜(中略)〜仕事を頼んでくれない」
ここにコンサルタントの苦悩が示されている。
著者はブルウィップ効果の原因が、在庫管理の甘さなどではなく、「人間の感情」であると気がついた。
※ブルウィップ効果…サプライチェーンの末端で生じるわずかな需要の変動が、チェーンをさかのぼるにつれて増幅され、最終的には大きな変動となって表れること→要するに、川下の影響が川上に行くほど大きくなるということかな?
つまり、サプライチェーン部門間の信頼関係を構築することなどが肝要であるということだ。
ところが、そのことをストレートに話すと、クライアントは相手にしてくれないという。
仕方なく、「在庫管理システムを導入することが大事です」などど見せかけのトークを引っ提げざるを得ない。
その点がジレンマだというのは知らない内容だった。
◇大事なところ
「ビジネスは『数字』では管理できない」
じゃあ!どうするの?
その問いに対して、著者は「ともかく大事なのは、モデルや理論などは捨て置いて、みんなで腹を割って話し合うことに尽きる」としている。
具体的な回答でないように思えるが、これは「間違い」ではない。
一方、「これって当たり前じゃない?」とも思ったが、「そんなのはもちろん当たり前のことだろう」とばっさり斬り捨てている。
なぜか、この部分が僕の持つ”従来”のコンサルタントらしさを感じ、著者の標榜する”あるべき”コンサルタントの姿と矛盾するような気がして、少し興味深かった。
◇面白かったところ
1.人の振り見て我振り直せ
著者が所属していたジェミニというコンサル会社。
ダウンサイジング(人員削減)の導入で有名だったが、
時代の趨勢についていけず、最終的には自社がダウンサイジングを実施することになったという皮肉な事例。
2.「コンサルが去ったあとに残るのは『大量の資料』だけ」
アイゼンハワーの有名な言葉から始まる。
「戦闘準備において、作戦そのものは役に立たないことを強く思い知らされたが、作戦を立てる行為こそが重要だ」
→ビジネスは予想通りに行かないが、準備をすることで軌道修正ができる、という結論を著者は導き出している。
計画自体にはほとんど意味はないが、計画を立てる過程にこそ価値がある、ということである。
この話をコンサルに当てはめると、
コンサルが残したパワーポイントや報告書をプリントアウトして読むだけでは意味がない。どうしてその結果が出たのか、分析し、頭を絞って考えることが大事。
外部に頼りっぱなしではなく、自社で考えて結論を出せる会社が強い。
「実際、その能力と時間、ノウハウがないからコンサルに任せるんだよ!」というのは尤もな意見であるが、だからこそそれをできる会社は強いし、その人材の価値は高くなると思う。
(大企業だと戦略策定は経営陣。現場との距離が離れることを考えると、会社規模が大きくなるほど難しくなるとは思う。)
3.問題を自覚しているけれど、変えられない時の救世主
著者はある工場の生産効率向上の案件を引き受けた。
現場の作業員の話をよく聞いて情報を集め、自分の頭で考えた結果、経営陣改善案を気に入ってもらえた、というケース。
今回の示唆はコンサルタントの力がここで発揮されるということだ。
今回は、現場の人が問題点を自負しているにもかかわらず、業務のやり方を変える権限がなく、疎外されていたという実態があった。
現場と経営陣の架け橋として、コンサルタントが活躍できた事例である。
少しだけ、今の仕事の状況に当てはまる気がして、不思議な気持ちになった。著者は「一部にメスを入れても意味がない」としている。その通りだ。
4.「数値目標」が組織を振り回す
この章で言いたいことは、「数値目標は手段であって、目的ではないこと」である。
数値目標を立てる
→大半の目標は"なぜか"達成できる
が、目標に見えない大事な部分が見過ごされてしまう。
営業職の売り上げというのは期末で一気に伸びることが多い。理由は、営業職がリベートや値引きを多用するからである。しかし結果的に会社としての利益は落ちる。
他にもある具体例としては
・無茶な目標を課せられていた営業担当が、「返品していいから買って!」といって、今期の目標は達成したが、来期には多くの返品が入り、会社は不良在庫を抱えることになる(その営業はクビになることを覚悟していた)
・修理センターの売り上げ向上を図ったところ、同センターで詐欺が頻発した。直さなくてもいいのに、故障だと告げるようになったのだ。そのことがバレ、会社は大ダメージを受けた。
・バスの運転手に対し、定刻通り運転したらインセンティブを与えるようにした。すると、運行予定に間に合わないペースだと、運転手は乗客の待つ停留所をスルーするようになった。
といったものがある。
数字によるインセンティブはあまりよくない、ということは以前会社のセミナーで聞いた内容だった。
その時はピンとこなかったが、この本を読んで腹落ちした。
要するに、数字を掲げることは大事だが、無茶な設定をしてしまうと、ねじ曲がった目標達成がなされ、結果的に大きなマイナスをしてしまう、ということだ。
「数字は嘘をつかない」というのは半分正解で、半分間違いである。間違い、というのは数字の扱い方に個人的な思惑が反映されるからである。これは「データに溺れる危険性〜里山創生を読んで〜」に通ずるものがある。
自分が上司になって、目標の査定などがあった際には、それが部下にとって達成可能な目標なのかどうか精査する必要があると思った。
また、目標を数値だけにおかずにモチベーションを上げるという点では、ダニエルピンクの「モチベーション3.0」における話が有用に思える。
ウィキペディアやチャリティー活動など無数の利他的活動がヒント。
「データ」に溺れる危険性〜里山創生を読んで〜
昨今はビッグデータ、AIなどデータやPCを活用して戦略を立てることが話題になっている。
特にウェブマーケティングと言われる業種においては、数字は何よりの信頼を得ている。
一方、「策士、策に溺れる」という諺がある。それと同じように「データに溺れる」ということがあるのではないか、と感じていたこの頃、一石を投じる本を今回手に取った。
「里山を創生する『デザイン的思考』」(岩佐十良)という本だ。
ここでいうデザイン思考とは、サービスを提供する際に、フレームワークに準じてサービスを策定するのではなく、ユーザーのニーズに基づいてサービスデザインをしていく方法である。
以下のトピックに分けて内容を書いていく。
◇あらすじ
◇ユニークだと思った内容
◇要旨
◇成功要因である3つのメソッド
◇成功法則10のポイントから抜粋
◇あらすじ
新潟の魚沼で旅館経営を開始した著者。成功はあり得ないと言われた計画だが、デザイン思考によって成功へと導いた。旅館は「ライフスタイルを提案するメディア」
◇ユニークだと思った内容
・マーケティングデータを盲信するのは×。行ってみてこそわかることがある。自分でいって感じることが大切。キーワードは「現実社会とデータの反復検証」
・著者の経歴。雑誌編集者。→宿もメディアとして扱う。
・どういう客をターゲットとするか。考えてブランディング。
・魚料理ではなく野菜料理。
◇要旨
データを見て判断するのではなく、まずは体験して肌で感じる。
その後でデータを見て、実感とデータの差を考える。
これが「現実社会とデータの反復検証」
※こういったアプローチを取るのは、データ自体が個人的価値観が介在しているため(アンケートの取り方で結果を左右させることができる、など)
◇感想
自分が思っていたことと重なった。
ちょうどデータだけを見ての判断は×だと感じていた頃だった。0と1の間で全てを判断するのは危険すぎる。
というのも、自分は一般家庭向けに規制緩和された商材の営業をしている。
省庁が行った規制緩和前のアンケートでは、「少しでも値下がりすれば乗り換える」という意見が大多数だった。しかし、実際に訪問すると、思っていた以上に変化への抵抗が大きい。
マーケティングの仕事に携わっていたこともあり、数字を重視する傾向があったが、それだけではなく現場を見ることが大事だと感じてきた頃だった。
この考えに基づくと、例えば、契約率のデータを見て、
A社…3.5%、B社…10%
A社→サボってるな。 B社→◯
と考えるだけではだめだと思った。
現場に行ってみたら客層が全然違う、ニーズとマッチングしていないなど、気がつくことがあるだろう。
もちろん数字を見ないわけではないが、数字に振り回されて実態をつかめないまま判断を下すことがないように、「肌間隔」と「数値」のバランスを常に意識していきたい。
◇成功要因である3つのメソッド
1.雑誌の作り方:体験、多重人格で感じる…肌で感じる
例)寿司特集をする場合
×など方法…ぐぐる、他の雑誌を読んで有名店に行く
◯な方法…ふらっと知らない寿司屋に入る。どんな人が来ているか、内装、味、間合いを感じる。人気になるには?を考えて、当てはまるお店を探していく。
2.①の共通項を抜き取る:共感の統合
例)赤みがうまいお店が人気
3.思考のスクラップ&ビルド:スピードを意識
例)「赤身特集」と銘打つ。読者に聞いて方向転換。
1→2→3→1→2→…と回転させていくメソッド。
1.にことさら感じたことでいうと、
「直感」「なんとなくいい」という感覚が大事。
これはパソコンには出来ない部分であり、今後大事になってくるもの。
この部分を磨くことでサービスが独自の価値を持ってくる。
◇成功法則10のポイントから抜粋
「特定の客層に深くコミットせよ」
→旅館経営はリピーターが大事。
広告費ゼロで来てくれることがありがたい。
一方、価格だけがウリになるとじり貧になる。
先日、社内の勉強会にて聞いた「付加価値が大事」に通ずるものがある。
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